12月13日(金)10時から、神奈川県在宅医療トレーニングセンターからのご依頼で講演をさせていただく機会を得ました。お題は「困難事例を振り返って〜なぜ困難になるのか〜」です。事例を交えた研修の方が聴講者が多いとのことでしたので自分で考えてこのお題にしてみたのですが、いざスライドを作ろうとした時に「困難事例ってなんだろう?」と考え始めて沼にハマり、完成まで結構な時間を費やしました。
人生の中では個人の努力でどうにもならない困難なことが多く起こりますし、そもそも他人のことを100%理解することはほぼ不可能です。生来生まれ持った遺伝的素因、口にしたもの、生きてきた環境と人の繋がり、果たしてきた役割、性格、様々な事象が積み重なった結果、疾病や障害を抱えて我々と出会うわけで、抱えている困り事が多岐に渡るのは当然のことで、それらを解決するのが容易ではないことも想像に難くありません。ですので言ってしまえば接する方の多くは困難事例と言えます。
対人支援において大事だと思っていることはいくつかありますが、特に重きをおいていることは「味方であり続けること」です。接する方々の歴史と価値観、性格、取り巻く環境や家庭状況などを網羅的に理解し受容した上で、プラスになるであろうと思われる選択肢を提示したり、関わりをしたりすること。理屈で正論を述べたり、我々が楽するために決めさせようとしたり、未来を先回りしてリスク回避のための手段を押し付けたりしてもなかなか変容は難しいことが多いと思います。これは医師・患者の構図だけでなく身内・友人・同僚などどの関係性においても成り立つことです。
誰もがいつ来るか分からない災害に対して備えているわけではないのと同じように、病気になった時・障害を抱えた時にどう生活したいかを考え、備えている人は多くないでしょう。考えたくない、決めたくないという人も一定数いるでしょう。決めようとしても決められない人も多くいることでしょう。仕方ないことです。人間だもの。
ということで、困難事例だと思ったらまず自分自身の考え方や在り方を見直し、関わり方を見直す良い機会ではないかと思います、と言った話をしました。主観と客観、理屈と感情、押し引き、ケースバイケースのバランスが大事だと思います。正解はないし、求めようとするとドツボにハマるかもしれません。だからこそやりがいがあるんですけどね。